2012年1月22日日曜日

購入者探鳥会

1月21日(土)

23年産湘南タゲリ米をご購入いただいた皆様を対象に、探鳥会を開催しました。
 当日は、時折小雨が降るあいにくのお天気。

最高気温でさえ一般の冷蔵庫より低い4.7℃(気象庁 藤沢市辻堂記録)という寒ーい一日でしたが、熱心な14名(うち小学生3名)の購入者様が参加して下さいました。
三翠会スタッフ9名と生産農家3名でお出迎えし、充実した観察会と懇談会が実施できました。
   
朝9時、観察地近くの駅に集合した参加者のみなさん。
前日の気象庁の予報では、なんとか雨は降らないという予報でしたが…。
まだ小雨が落ちてきます (T_T)。

でも、元気な小学生を含む熱心な参加者のみなさん。
お一人も欠席はなく、タゲリに会えるのを楽しみに集まって下さいました。

このあと、スタッフが用意した自家用車に分乗し、観察地に向かいました。
スタッフの中には、所要で関西に出かけられていた方もあり、この日のために駆けつけました。

●タゲリを観察

観察ポイントへ到着。
すると、すぐに頭上でオオタカが出迎えてくれました。

スタッフの一部は、朝早くから探索隊を作って予めタゲリの居場所を見つけ、そのまま3時間近く、遠巻きに見張って待ってくれていました。
クリックすると拡大します。
タゲリ飛来地は、周囲に田んぼが広がる見通しのよい場所。
ここは湘南地方にわずかに残された貴重な場所です。
タゲリは、こうした湿地=田んぼが広がる場所を好みます。

スタッフが見つけてくれていたタゲリを、さっそくみなさんで観察。

タゲリは遠くの田んぼにいます(写真一番奥)。


私たちはもちろん脅かさないように離れて、注意深く見守るようにスコープをのぞきました。
この日は北よりの冷たい風が吹き、オオタカ、ツミ、チョウゲンボウといった猛禽類も飛んでいたので、7羽のタゲリたちはじっと身を寄せ合うようにして、田んぼで休んでいました。

●タゲリ米 田んぼでの観察


タゲリを観察したあと、タゲリ米を生産する田んぼへ移動しました。
周囲の野鳥を観察しながら、田んぼと自然保護の取り組みをご覧いただきました。


レポーターの私が始めてタゲリを見たのは、三翠会会員として参加した2006年の12月。
ちょうどこの写真にある田んぼ(会がお米作りの体験用に借りている田んぼ)でした。
10羽ほどの群れが、稲のひこばえに沿って一列に並んで休んでいました。

タゲリ米生産地は、この10年来、周囲を高速道路や大きな建物を含む市街地が迫って、タゲリは群れではなかなか訪れることができなくなりました。
それでも、少ない頻度ですが、私たちの活動を励ましてくれるように、毎年必ず1~2羽が姿を見せてくれます。
クリックすると拡大します。
土でできた堤防の上、写真左に田んぼ、右に用水を供給する本河川を望みながら野鳥を観察しました。
河川では、ヒドリガモの群れ、コガモのペアたち、ダイサギ、アオサギ、田んぼで子育てするバン、オオバン、カワウ、カイツブリといった水鳥のほか、湘南の海から河川沿いにさかのぼって来たのでしょうか? 魚を捕らえる大きなタカ=ミサゴも姿を見せてくれました。

●自然保護の取り組み
 
田んぼに、ナマズなどの魚を呼び込むための魚道をご覧いただきました。
 
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魚道は場所に応じて、それぞれに適したタイプのものを設置しています。
ここでご覧頂いているのは、ビオトープと本河川へ繋がる排水用水路を結ぶ埋設魚道。

こちらはビオトープ。
冬の間、田んぼは水を落としていますが、休耕田を利用して一角に水をたたえるビオトープを設置。
本河川へ移動出来なかった、冬でも水を必要とする小さな魚類や水生昆虫類のすみかとしています。
また湘南地方では数が少なくなった水生植物の生息地ともなっています。

田んぼではすでに荒起こしが行われていて、今年平成24年のお米作りの第一歩が始まっていました。

●懇談会とTV記録番組の鑑賞


野外での観察会が終了後、地元の自治会館で休憩。
農家の方(小西勝義さん、鈴木敏男さん、当会鈴木國臣)に、お米作りのお話などをうかがいました。

経済原理一辺倒の単純な考えをすると、現在湘南地方でお米を作ることは営利事業としては成り立たず、むしろ経費持ち出しとなる赤字事業となってしまう現状をうかがいました。

しかし、それでも多くの農家がお米作りを続けているのは、先祖から受け継いだ田んぼを無にはできない。祭礼などの地域行事でお餅をまくなどの伝統行事を続けたい…といった理由があり、また、地域の結びつきや防犯防災、子育て、環境保全などの自治的な活動を支えているのは、お米作りの農家が中心を担っている。
さらに、湘南タゲリ米を通して、多くの購入者様のご支援をいただき大きな励みになっている。
そうしたお話をおうかがいしました。



お昼を食べていったん解散後、2005年に放映された素敵な宇宙船地球号で紹介された「「“貴婦人”の舞う里」(日本<神奈川>)」を鑑賞しました。

ちょうど大寒の日に当たる寒い一日でしたが、観察会としてはとても充実した一日でした。
参加者と農家のみなさま、スタッフの熱意。
そしてタゲリやその他の野鳥たち…みんなに感謝で、気持ちは温かさでいっぱいになれました。


●この日観察した野鳥
ツミ、オオタカ、タゲリ、チョウゲンボウ、カワラヒワ、ヒバリ、タヒバリ、ムクドリ、スズメ、ホオジロ、シジュウカラ、ツグミ、キジバト、ドバト、ヒヨドリ、カラス(ハシボソ&ハシブト)、ヒドリガモ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、バン、オオバン、カイツブリ、カワウ、ミサゴ、トビ、アオジ、ハクセキレイ

PS
感謝! 観察会参加者からのリポート。
● Photo.album タゲリ米の里観察会…fromブログ スギちゃんが行く!
●再びタゲリの里へ…from 鳥見風来坊 さん
▲とても丁寧な参加報告をいただきました。
「米生産農家の苦労話を聞くこと…、普通の探鳥会では味わえないイベントに参加者は皆満足している様子であった。」
 

Staff:
N.Kobayashi,S.Kumazawa,T.Sakurai,K.Suzuki,K.Higuchi, M.Hirata,K.Hiraiwa,Y.Moriue,A.Yoshida
Photo. & Text. by T.Sakurai タゲリの写真はK.Higuchi

2012年1月17日火曜日

新年会

1月14日 翌週22日に控えた タゲリ米購入者様を対象とした探鳥会の下見を行いました。
観察対象の湘南地域のタゲリは、12月の調査時の5羽から7羽に増えて、少し安心しました。
どうか、当日も見ることができますように。

下見の詳しい様子は、プロジェクトリーダーの樋口さんがFacebookにまとめて下さいました。>> こちら



さて、この日は三翠会の新年会を催しました。
場所は市内中心部、文化会館内の和食レストランちそう 地元食材を使った創作メニューなどで知られる懐石料理店馳走庵の支店です。

ワインのソムリエの資格を持つ店長の計らいで、7年前の2005年にテレビ朝日で、湘南タゲリ米を紹介して下さった 宇宙船地球号のビデオ(レポーター:石原良純・語り:緒方拳)を大型スクリーンで放映させてもらい、それを見ながら美味しい食事を楽しみました。 7年前の田んぼには、まだたくさんのタゲリが群れになって舞っていました。なんだか見ていて目頭が熱くなりました。

さて、お酒はもちろん本格焼酎たげり。ワインのソムリエ資格を持つ店長さんも、「これは美味しい」と太鼓判を押してくれました。

 本格焼酎たげりを置いて頂くようお願いしましたので、ぜひ機会がありましたらご指名いただき、ご賞味ください。

Photo. & Text. by T.Sakurai


新年のご挨拶

新年おめでとうございます。
写真は1月元旦、タゲリ米の田んぼを見下ろす小出川の土手から迎えた、2012年の初日の出です。

3月の東日本大震災、それに続く原発事故と放射能で揺れた一年でした。

●大震災
3月には、いわき市から避難された福祉施設のみなさんの支援をされた「エルファロを救う会」に協力し、小学生がタゲリ米田んぼで作ったお米を贈り、また代表の鈴木國臣さんが義援金を募るための野菜の販売をしました。

4月、5月と原発事故の広がりが明らかになり、県内でも足柄地域で基準値を超える放射能がお茶の葉から検出され、農と食に関わる人々に大きな不安を与えました。そんな中で今年のコメ作りが始まりました。

バイオディーゼル

 しかし、ここで新しい試みを始めています。


鈴木さんが新しいトラクターを導入。その燃料に、市内の茅ケ崎一般飲食店組合と湘南オイルサービスが協力して作っている食用廃油を利用したエコエネルギー、バイオディーゼルオイルを利用しました。食とエネルギーのエコ&地産地消の輪に、お米作りの現場から農の輪も加えていく試みです。

●生き物調査で市に協力
茅ヶ崎市は市民の協力により、全国的に見ても大変レベルの高い自然環境調査が実施されていますが、その「評価再調査検討会議に基づく調査」に、魚類、水せい生物分野で三翠会が協力。5月から11月の半年間、毎月市内各所の河川、流域に入って投網を入れ、実際に生息している生き物を調べました。


●田植えピンチ…揚水ポンプの故障
6月に入り、例年通り各農家が田植えを行いました。ところがその最初に、田んぼに水を供給するポンプが故障。水を引い入れることが出来なくなり、田植えが続けらないのではないかと困ってしまいました。県土木の河川工事に伴い、3年前に、それまでの可動堰による自然流下の取水方式に代えて、電動式のポンプを使った取水方法に変わりました。電気を使った最新鋭…というふれこみだったのですが、川を流れ下る草木やゴミなどが詰まってしまったのが原因です(結局、それらを人力で除去してきたのですが…それが間に合わなくなった)。原発事故による折からの停電の心配の中、底の浅い近代技術の脆弱性を、あらためて知らしめる結果となりました。

●大震災復興祭へ出店
6月にはまた、 茅ヶ崎中央公園で大震災復興チャリティーイベントが開催され、三翠会も出展ブースを設けて黒米の販売を行いました。ここでも新しい試みを行いました。地域産業の次代を担う青年会議所の若い人達と一緒にブースを組み、青年会議所のみなさんが地域産品開発のひとつとして取り組まれている烏帽子岩産のワカメの佃煮を販売。この試食にタゲリ米(白米)を提供しました。


●生命の賑わい
田んぼへの取水と同時に、昨年もナマズをはじめとする多くの魚類が、三翠会が設置した魚道を通って田んぼに産卵に訪れました。また、その魚たちを目当てに、コサギ、アマサギ、ゴイサギなどのサギ類、田んぼの昆虫類などを餌にするヒバリ、オオヨシキリ、またここで子育てをするバンやカルガモなどが訪れ、夏のタゲリ田んぼは生きものたちで賑わいました。ただ、招かざる客?、外来生物で稲を食害するとされるジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)の繁殖が近隣の田んぼで確認されました。今後の動向が気になるところです。

●台風襲来
 さて、一昨年はたいへんな猛暑で、お盆時期に開花した後、登熟期(お米が作られ始める時期)に異常な高温に見まわれ品質が低下してしまいましたが、昨年はちょうどその時期に秋風が吹いてくれて、お米は順調に育って行きました。しかし、稲刈り直前の9月21日、日本列島を縦断して各地に大きな災害の爪痕を残した台風15号が通過。田んぼは一面水浸し(これによって市街地の洪水が未然に防がれているのですが…)、しかも強風により実って重たくなっていた稲が一部倒れてしまいました。そのままにするとお米の品質が落ちてしまいます。すぐに修復作業を行いました。(各農家は毎年襲来する台風を見越して、予め倒伏しないように、栽培期間を通して水や施肥管理をして多くはあの台風を乗り越えました)

●放射能検査
また昨年の収穫は、県による放射能調査の結果を待つという…前代未聞の出来事の中で行われました。幸い神奈川県は基準値を超える場所はなく、無事収穫することができました。

●美味しいお米を無事出荷
こんな、汗と心配や喜びがこもごも過ぎて、11月、今年もみなさまにタゲリ米をお送りすることができました。

9月の台風を除き、天候に恵まれたこともあって、例年になく美味しいお米になったようです。生産した農家のみなさんも「今年はうまいぞー」と自慢し、お米マイスターの資格を持つ市内のお米屋さんが太鼓判を押してくれるほどでした。購入されたみなさまからも「美味しかった!」というご感想をいただきました。11月26日には、神奈川新聞に「生き物米で”食べる環境保全”メダカや渡り鳥がすめる水田」というタイトルで大きく紹介されました。

●高校で授業
三翠会では、地元小学校のお米作り体験の学習のお手伝いや、公民館の社会教育事業など、市内の教育機関への協力を行なっています。そのひとつとして、11月22日には市内の県立鶴嶺高校のボランティア授業を行い、次代を担う若者たちにタゲリ米の活動とその意義についてお伝えしました。生徒さんたちは真剣に授業を聴いてくれて、寄せられた感想には、まさに私達が目指してきた事柄がわかりやすく述べられて、しっかり伝わったようです。

●タゲリ一斉調査
12月18日 一年を締めくくる活動として、10年来続けているタゲリの飛来数、一斉調査が行われました。 
相模川から西の湘南エリア(茅ヶ崎、寒川、藤沢)で5羽。平塚・伊勢原で27羽を数えました。年々減少を続けているのですが、今期もまた減ってしまいました。(ただ、年を越しての購入者探鳥会下見調査では7羽に増加)
 原因は、依然として止まらない田んぼの減少や、また繁殖地での問題もあるかもしれません。

しかし、ここまで少なくなったにもかかわらず毎年訪れてくれるのです。湘南のタゲリが幻の鳥にならないように、今年もお米作りと販売、生き物調査などの活動を通じて頑張っていきたと思います。


みなさま、今年もよろしくお願いします。
メンバー一同 
(写真は1月14日今年はじめての例会・下見調査後での新年会にて) 
  Photo. by K.Hiraiwa Text. by T.Sakurai

2012年1月1日日曜日

タゲリの一斉調査

12月18日(土) 
三翠会では、10年来続けているタゲリの一斉調査を実施しました。
茅ヶ崎市、藤沢市、寒川町、平塚市、伊勢原市の水田地帯に調査員を配置し、同時刻にタゲリの有無をカウントすることによって、湘南地域全体に飛来しているタゲリの実数を把握しようという調査です。

今回の調査では、茅ヶ崎市、藤沢市、寒川町エリアでは5羽、平塚伊勢原エリアでは27羽のタゲリが確認されました。
これまでの調査から、相模川から西の湘南エリアでは年々減少を続けていますが、今年は更に減って、昨年の9羽から5羽になり、今年も減少の傾向が止まっていません。
越冬地であり日本の水田の減少、畑への転作や休耕田化などの原因や、繁殖地であるユーラシア大陸の問題もあるかもしれません。引き続き調査を続けていきたいと思います。

調査リーダー 樋口公平